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パズルゲーム感想アーカイブ

ひらめきが世界を拓く大冒険 “Toki Tori 2+”

前作に存在した時間を巻き戻す機能が今作でなぜ削除されてしまったのか?
全ての謎を解き明かした人になら、その理由は語らずともわかるはずだ。

前作 “Toki Tori” は3DS版をクリア済み。
かなり昔のプレイだったせいで感想のアーカイブ化ができなかったが、細部まで計算され尽くした芸術的なレベルデザインに感銘を受けたことは鮮明に覚えている。

問題ごとに決められたツールを駆使して1問ずつ解いていくパズルプラットフォーム問題集だった前作から一転して、今作は歌とヒップアタックのたった二つのツールで探索していくメトロイドヴァニアとなり、まさしく冒険のようなパズルとなっている。

ざっくりとしたイメージではあるが、前作は基本的に下に移動しながら上に登るための方法を模索するという、上下移動が思考の主軸となるパズルだった。
一方今作は左右移動が基本で、それを妨げる形で超えられない壁が設置されているので、ルールのみならずレベルデザインの設計思想も前作とは全く違う。

そんな今作だが全てのアイテムを回収しクリアした時に残ったのは、前作と同様に素晴らしかったレベルデザインへの感動と、大冒険を終えた後の深い深い余韻だった。
この冒険の面白さを何のクッションもなしに詳らかにしてしまうのは少々憚られる。なので何がどう面白かったのかについては以下に格納した。

ネタバレ項目: 冒険へのいざない

このゲームは「誘導」が非常に巧い。最初のうちこそまるで順路通りに歩かされるような感覚に退屈しがちではあるのだが、一旦の区切りとも言えるとある地点に辿り着くと、今までの旅路がこれから起こることの前座でしかなかったこと、そして世界が予想外に広いことに気づく。
そこから一気にこのゲームはパズルゲームとしての本領を発揮する。絶対に行けないと思って一度は見送った場所のみならず、そもそも超えられるとも思っていなかった場所にすらも向き合わねばならなくなる。
冒険の始まりと同時に順路とは逆方向に進んで探索するというのは好奇心旺盛なゲーマーにありがちな話だが、あの場所がただの行き止まりの壁ではなくステージの一部として超えられる場所であると、一体どれだけの人々が気づけるだろうか?
そして未踏の地が予想を超えてあちこちに存在していたことを知った時、広がる世界を前にして期待で心躍らずにいられるだろうか?

これらを超えるのに必要なものが、幾重にも深く論理立てられた思考であることは前作と変わりない。だが今作におけるレベルデザインは枠組の作り方として、考えるべき領域を拡張させるような作りをしている。
メトロイドヴァニアであるがゆえに目的地へのアクセス手段がそのステージにあるわけではないし、あるにはあるもののステージの端から端までの移動を考えなければいけなかったりと、目の前のギミックを目の前のもののためにどう使うかに関して考えているだけでは解けず、全体の中でどう組み込むかを考えなければ解けない。

前作に存在した時間を巻き戻すギミックがなぜ今作で存在しないのか、その理由はここにある。
そのシステムは便利ではあるものの、その時に見えている範囲内の謎に執着してしまいかねない。新しい発見やひらめきを得るには目の前のいかにもそれっぽいギミックを限界まで試すのではなく、もっと世界を歩いて見てまわる必要がある。だからこそ、このゲームに時間の巻き戻しは不要である。
私も前半は時間を巻き戻す機能がなくなってしまったことを嘆いたが、全ての謎が解けてしまえばその判断を称賛したいほどだ。

私のようなマヌケの表現力では、いかにこの作品が素晴らしいかを語り尽くせないのが実に歯痒い。
代わりというわけではないが、この作品の「説明」と「誘導」の巧さについて、メトロイドヴァニアのゲームデザインの側面から簡潔明瞭に語っている動画を紹介したい。

追記

Wii Uでの感動をもう一度と思いSwitch版をプレイ。
実績やステートセーブの歌が追加されてプレイしやすくなっていたものの、Wii U版の時点でこれ以上ないほどに完成されていたため蛇足のように感じた。
特に実績に関しては既に他のプラットフォームで実装されていたものからさらに新しい実績が追加されていたのだが、これらに関する攻略情報が全くなく解除に苦労した。

以下、特にノーヒント解除が難しい追加実績に関するヒントを示す。より直接的なヒントが必要な場合は答えの項目を展開してほしい。