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パズルゲーム感想アーカイブ

星雲のパレード “FROST”

あちらを立てればこちらが立たず。
だがこの磊落の空間では、仔細にこだわる必要はない。

光の粒子を指定の場所まで流し込むゲーム。
プレイヤーは粒子の流れを操作する場を描くことができ、ゴールまでの流入経路を整えるパズルとなっている。

空間を漂う光の粒子は描いた場に従い動くものから反発するもの、場に関係なく動くが別の粒子によって動きを変えるものなど、その性質は粒子ごとに千差万別である。
それらに関する説明は一切ないので、全て自分で見て、操って、干渉させて観察するしかない。

このように問題のクリアには光の粒子の性質を理解するために半ば謎解き的なアプローチが必要になるのだが、粒子の性質への理解はこのゲームの楽しみ方の一つだとしても、決してパズルの主題ではない。
粒子には当然細かい仕様や設定されたパラメータの強弱があるのだろうが、問題を解くにあたり枝葉への理解は一切必要なく、大まかな観察で得られる大まかな情報だけでも十分である。
見た目の緩やかさも相まって、直感的に理解できるというそれだけでも心地いい。

そして、このパズルは直感的に理解できるルールでありながら、単調に堕ちずに正しくパズルとして成立している。それはルールの理解を起点としてパズルの枠の数々を丁寧に組み上げているからだ。
粒子同士の干渉、場の干渉など、2D平面での衝突をいかにして回避するかというねじれはもちろんのこと、ゴールは光を保持できず定められた法則に従って減衰していくので、これをどう回避するかも問われる。定期的な流入を用意するか、一気に流し込むか、セルフで流入を切り替えるか。
直感的に理解できるルールでありながら、パズルとして解決すべき事柄がしっかりねじられているのがこのパズルの素晴らしい点である。
さらに素晴らしいのが、それらが全て大雑把に、つまり従った直感の思うがままに解けるように調整されていることである。レベルデザインは基本的に部分的な調節の総合ではなく全体的な体系を作る解法を求めるべく設計されているので、思考が必要なパズルであると同時に、直感的な思考を切り替える必要がないまま気持ちよく解くことができる。

ただし、全ての問題がそうというわけではない。流量の調整などはやろうと思えばいくらでもアドリブを要求するアクションに傾くことができ、やはり中には臨機応変な対応を要求される問題や微調整が必要なものもあり、そういった問題でストレスを抱えてしまうのは避けられなかった。それまでが気持ちよく解けていただけになおさらである。
場を作り眺めるパズルである限りこのゲームはきっと面白くあり続けるだろうが、流れを作るパズルから独自に動き回るパズルになると少々面倒になるだろうか。

頭を休めながら解けるといういい意味で頭を使う必要のないパズルだった。優雅に流れる粒子ははただぼんやり眺めているだけでも楽しい。
今まで癒しを売りにしたパズルには碌なものがなかったが、この作品は一つの模範と言える。

追記

20問が追加され、全部で75+2問となった。
直感的に理解できる気持ちよさは依然健在だが、レベルデザインが部分的な調節の総合へと傾いていたのが気になった。
追加された問題では場を作るのではなく誘導によって実質的に操作させる場面が多く、やることがわかっているにもかかわらずその動作がままならないストレスに強く晒されることとなった。72問目なんかは特に酷い。
問題数の少なさによる満足感の薄さがあったのは確かだが、それ以上にプレイ体験の気持ちよさを阻害しては本末転倒だろう。

関連項目

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