鳴り止まぬ4ビートに操られて “Telepaint!”
一見可愛らしく鮮やかなパズルだが、その色彩には何の意味もない。パズルゲームのデザインはレベルデザインだけではない。
BGMに合わせて勝手に歩き続けるペンキ缶がステージクリアの鍵を取れるように誘導するパズル。
プレイヤーが取れるアクションはポータル操作だけである。2点のポータルを指定すると、ペンキ缶と同様、BGMに合わせたタイミングで両者の位置を交換する。
ポータルの発動はどちらかに何かが触れた瞬間なので、二つの物体の入れ替えだけではなく、片方だけの移動にも使える。
BGMに合わせて強制的に動き続けるというルールなので、レベルデザインの枠組は向きや周期といったパラメータを揃えさせる趣向が強いが、ギミックとしてブロックが取り入れられていることで、思考停止の調整だけでは解けない、パズルプラットフォームらしい後戻りのできない足場操作をも考える必要のあるパズルとして仕上がっている。
安易な逆算で解けてしまう問題も多いが、歯応えのある問題もいくつかある。
そしてこのゲームで最も印象的だったのはパズルのルールともいえるBGMで、そのどれもが良曲だった。
個人的に特に気に入っているのはDLC問題集の一つ、HDMI 01のBGMだ。新ギミック2種をレベルデザインの主軸に据えた全40問のDLCは特段難しいわけではないが、本編が気に入ったなら満足いく内容だろう。
しかしながら、パズルゲームにおけるゲームデザインの面からこのゲームを見てみると、BGMに合わせてペンキ缶が中身を飛び散らせながら歩き回るという内容は、実はパズルそのものには全く関与していない。
いちいちペンキの中身をぶちまける行為にはパズル上の意味はおろかストーリー上の意味すらなく、ポータルの色分けも飛び散る色が変わるだけ。良曲揃いのBGMも歩調差も何もない一拍一歩のルールしかないせいで実はなくても成立してしまう。こうなるとメトロノームですらない。
この作品において、パズルとゲームは互いに分離してしまっている。
考えられたレベルデザインに加えて癒しと可愛らしさを兼ね備えたパズルではあったものの、その魅力は内面と外面とで独立したものであり、ゲームとしての融合はうまくいっているようには見えなかった。