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パズルゲーム感想アーカイブ

果てなきリスクヘッジ “Swapperoo”

突発的タスクの数々に予定を立てて対処したところで、どうせ想定外のタスクに割り込まれて終わるだけ。なんて無情な……。

パネルごとに動きのルールが定められているマッチ3パズル。
矩形の盤面に下向きの重力と見た目は普通だが操作はかなり制限されている。

パネルの種類は三つ。一つ目は指定するとそれが示す向きのパネルと位置を交換する三角形のパネル、二つ目は指定すると壊すことのできる円形のパネル、そして三つ目は指定することのできない四角形のパネルである。
これらが並ぶ盤面で1手ずつパネルを指定していき、形状に関係なく同じ色が3個以上連なると消える。

ゲームのモードはいくつかあるが、大まかに分けると二つ。一つはそれぞれのパネルにランダムなタイミングで手数制限を付与することでゲームオーバーの条件とするスコアアタックで、もう一つは規定手数以内での盤面上のパネルの全消しを求めるパズルである。
このゲームのメインは前者だろうが、パズルの奴隷たるマヌケのメインは後者である。同じルールでも大枠が全く違うため、感想も分けて記載する。

まずパズルモードだが、やはりこちらはおまけとして作られたからだろうか、意外な良問があったりもしたが、全体的に簡単で拍子抜けだった。
大半の問題でパネルが独立してしまっていたり、あからさまな配置しかされていないため、パネルの組をどのように分けるかとか、どの順番で消えるように連鎖を組むかなどといった試行前の目算すらも必要がない。盤面のサイズやパネルの数が増えても解決すべき事柄がねじれるわけでもなく、ただ別個の枠組が隣に生えただけでしかない。
また、規定手数も必ずしも最小というわけではなく詰めが甘い。
この作品の制作者は滑る床のパズルの良作・Quellシリーズも手掛けているが、その実績を考えると雑に作られた印象は否めない。“Better than us” が軽い言葉に堕ちる様は見たくなかった。

そして本来のメインであるスコアアタックモードだが、メインに据えているだけあってか、モードも問題ごとに異なる設定の環境で定められた条件を満たせばクリアとなるノーマルモード、それらの簡易版を通しでプレイするチャレンジモード、解き進めるほど設定が厳しくなっていくエンドレスモードと豊富である。
手数もカウントが0になれば即ゲームオーバーというわけではなく、爆発まである程度の猶予があるので見た目よりは自由が残されている。
ゲームスピードを上げることでゲームオーバーを誘発する作品の多い中、じっくり考えることができるというのはユニークだろう。

しかしながら、プレイヤーが制御できる要素がほとんどないため、総じてひたすら運ゲーに耐え続けるゲームと化してしまっていた。
パネルを入れ替える手段に乏しい中、目当てのパネルを消すには都合のいいパネルが落ちてくるのを待つしかない。遠回りによって解決できることもあるが、当然その分だけ大幅に手数を削られることとなるので、いずれにしろ賭けになることは変わりない。次にどのようなパネルが落ちてくるかがある程度把握できれば多少は楽になるのだが、それらを窺い知ることは一切できない。
高難易度版の問題やエンドレスの後半などでは、四角形パネルは二度消しを要求するようになったり、ランダムに入れ替え禁止の凍結処理が入るようになったりとますます消しにくくなるので、目当てのパネルを消す手段のなさに泣くことはさらに多くなる。

そしてこのパズルの最も残念な欠点は、補充されたパネルによる連鎖が入るメリットが全くないことである。
消したいパネルがたまたま消えることはあるが、それ以上に手段として残しておいた三角形や円形パネルが意図せず消されてしまうという事故のほうが深刻である。
予期せぬ大連鎖はこの手のパズルの醍醐味だが、事故が怖くて連鎖が起こらないことを祈るようになってしまっては元も子もない。

どんなにじっくり戦略を練ったところで想定外を拝む他なく、また想定外に邪魔されるこのパズルには、熟考が嵌まる気持ちよさも、パネルがサクサク消える爽快感もありはしなかった。

関連項目

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