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パズルゲーム感想アーカイブ

不調和セッション “Resynth”

自分のペースを他人に握られる感覚。
従うのは自由とはいえど、ならばその他人の存在意義は一体どうなる?

グリッド制の盤面で1マス後ろから押すことで箱を動かしたり固定された棒を回したりして指定の位置に揃えるという、いわゆる倉庫番ライクなパズル。
複雑なギミックやルールなどもなく倉庫番としてはオーソドックスな内容だが、盤面がシーケンサーに見立てられていて、盤面上の箱や棒がそれぞれの位置とタイムラインに沿って音を鳴らすというリズミカルな特徴を持つ。正しい位置に合わせるとその音はより明瞭になり、クリアすると盤面は一つのフレーズを紡ぎ出す。

盤面を譜面化する試みはゲームとして面白い表現ではあるのだが、しかしながらというかやはりというか、パズルとは全く関係がなく、ただ集中力を削ぐだけの雑音でしかなかった。見ている分には面白いかもしれないが、解く分には一切の面白みが存在していない。
こんな環境で時間と手数を評価するノルマまであるのだからたまったものではない。同時に達成する必要がないだけマシではあるが、いずれにしろ表現手法が出しゃばったパズルで心穏やかに挑めるものではない。

レベルデザインに関しては、エリア分けされたいくつかのブロックを一つの盤面にくっつけただけのようなわかりやすい構造に見えるが、ただ広さに甘えているだけではなく、エリア同士に棒を回す順番や箱の位置などでしっかりねじれを設けている。難易度でいえば手数に依存する部分が大きいとはいえ、それでもその出来は綺麗なものだった。
だからこそ、モチーフとの噛み合わなさが余計に残念に思えてならない。

その他UI等に関しても、手数がゲージ表示なせいで区間ごとの評価がしにくかったり、アンドゥが手数と時間を巻き戻さないため押し間違いを誘発するだけでしかないありがた迷惑な機能になってしまっていたりなどの欠点があった。
それらを鑑みるに、部分的な面白さや機能の便利さは際立つものの、全体的に仕上げる段になると噛み合わず歪になるという傾向は、この作品の一貫した課題なのかもしれない。
そこにパズルのレベルデザインが含まれていなかったというのは偶然なのだろうか?