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パズルゲーム感想アーカイブ

踏み台トリオの薄鈍登山 “Path of Giants”

雪舞う霊峰は美しく探検家たちは健気でかわいい。だがそれだけだ。

3人の探検家が互いに協力し合いながらゴールを目指すパズル。
盤面はグリッド制だが縦横だけでなく高さもあるという2.5Dとなっている。高さ2の段差が至る所に存在していて、誰か一人を足場にすることで残りを上に登らせ、先へ進むための道を切り拓いてもらう。
3人はそれぞれ青色のBern、緑色のMatchi、黄色のTotchと色で区別されていて、ギミックやゴールの位置などを色で指定することで、誰をどの順で登らせ何をするかを考えさせるパズルとなっている。
ちなみに一連の問題の最後には取って付けた蛇足のような配線パズルがあるがこれに関しては割愛する。

段差は登るだけではなく降りるにも足場が必要と協力体制には対称性が存在しているが、ギミックはそうではない。動き出すまでの時間差を利用して踏んだスイッチに対応する足場にダッシュで駆け込んだり、降りた後元の位置まで戻ってしまう天秤など、ギミックは対称性を壊させるものが多い。
このパズルはこの対称性の破壊による手詰まりか、あるいは到達可能な場所を多く見せかけるというダミーの設置のどちらかによって難しくしようとしている。
ねじれの構築までには至っていないが、ギミックが順路を示すようなあからさまな構成は少ないので、少なくとも雑に作られたわけではないのは確かである。

対称性の破壊は単なる個人の好みとして気に食わないが、時にはパズルとして難しくするために必要となるだろう。
しかしながら、このパズルではその必要性が疑わしくなる明確な欠点が存在している。探検家の一挙手一投足が必要以上に丁寧で、テンポが非常に悪いのだ。そのくせ動作のキャンセルを嫌う実績を用意していたり、アンドゥの数を数えたりしている始末である。
このパズルは色の区別によってダミーによる目眩しよりも対称性の破壊による手詰まりのほうが多くなっていくので、このテンポの悪さは色の順番を変えて同じ手順をやり直すという作業の増加に対して最悪の噛み合い方をしている。
意味もないシステムの取り上げで苛立ったことは言うまでもない。対称性の破壊をレベルデザインに組み込むならばやり直しのしやすさは必須だろうに、何を考えてこんな仕様にしたのかわからない。

レベルデザインは雑に作られたわけではなく、外面のデザインもパズルとしてわかりやすくしようと段差に目印をつけたりスイッチで動く足場の土台を色分けしたりとUIに工夫は凝らされている。だがことごとく中途半端である。
レベルデザインは結局考えるよりも移動待ちの時間の方が長いほどに簡単で、何の変哲もない配線パズルを組み込む意味もなく、足場の目印もギミックで動く足場などには非対応でリフトなどは止まる位置が全くの不明瞭、そして実績はこれらと何ら噛み合っていない。
何もかもが中途半端なこのゲームにパズルとしての面白みはまるでなく、あるのはただただ焦ったさだけだった。