パーかギブアップか “Golf Peaks”
登る山も越える谷も、全てはただのハリボテ。
段差や谷底、池といった入り組んだ盤面の中、手持ちの打法カードを切ることでボールを打ちカップインを目指すパズル。
ゴルフをモチーフにしているだけあって、打法カードには飛距離だけではなく打ち方も定められている。どんなに力を込めたところで崖の上にはパターでは届かないし、斜面にショットでアプローチすれば勢いが減衰して転がり落ちるだけである。
見た目こそ愉快なパズルではあるが、中身は驚くほど簡単だった。
パズルの基本ルールである打法カードは自由を縛るためのものなのだろうが、手が狭まることで同時にダミールートも容易に潰されてしまうため、このパズルは逆算が簡単になってしまいやすいという致命的な欠点を抱えてしまっている。
このパズルにもいかにも正解への近道かと言わんばかりのダミールートが用意された問題があるものの、その多くは打法の組み合わせを計算するだけで大した検討も必要なく除外される。そうなればゴールから逆算してカードとその切り時で確定させられるものを順に抜いていけば、あとは常識的な範囲の総当たりすらも必要がないほど簡単である。
このパズルで一番難しいことはどうすれば難しくなるかを考えることだろう。
見た目をユニークにしているゴルフと山登りの組み合わせも、融合がうまくいっているように見えない。
ゴルフはともかく山登りしている感覚なんてものは一切ない。そもそも舞台が山とは限らないので山登りですらない。
さらに言えば谷のせいで縦と横のラインがわかりにくいし、段差に隠れるエリアができたりと見やすさに関してマイナスの作用が目立って仕方がない。
ゴルフ要素はパズルのルールとしてうまく融合しているものもあるが、同時に理解の妨げとなっている側面もあるので、ユニークなデザインとは言えるものの、スマートなデザインとは言いがたい。力を入れすぎるとカップを通り越してしまったり、池ポチャしてしまった時のやり直し位置など、パズルの細かいルールをゴルフに則って定めているのは面白いが、ゴルフのルールを知らない人にとっては直感的にわかりにくいのは否定できないだろう。ゴルフのルールに詳しくない人がOBと池ポチャに区別があるのではないかという発想に思い至るのは難しいのではないだろうか。
見た目の面白さは作れても、中身の面白さまで繋げるのは難しい。それがよくわかる作品だった。
追記
今日までに2回のアップデートが入り、計36問が追加された。
構造的に簡単になりやすいこのパズルの難易度を上げる方法として、そもそも見かけ上の経路が多く取れる盤面を作る、初手の手数の総和では足りない場所にカップを置く、カードの量を増やし正解をなるべく一意とするなどといった形で解決策を出そうと多大な努力を払っていたことが窺えた。
カードが少ないと難易度が上がらないという本質的な欠点は相変わらずだが、この難問に対して立ち向かい続ける姿勢は素晴らしい。
移動パネルは微妙だったが氷面は良ギミックだった。次は長打カードだらけの狭いホールなんてのはどうだろうか?