うたた寝の夢 “Apollo: A Dream Odyssey”
30分で覚める夢。30分で終わるOdyssey。
来訪者に導かれるままに夢の世界を旅するゲーム。
道を阻む黒いもやを星の力で払いながらゴールを目指していく。
星を入手するには謎解きをする必要があるが、それらは総じて簡単なものばかりである。内容は記憶力テストや聴き取りテスト、対応関係の点つなぎやかくれんぼ等のもので、解決すべき事柄を整理し順に紐解くようなものではない。つまりパズルとは程遠い。
ゲームの内容が薄いのも欠点だが、操作面でも大きな欠点が存在する。
移動・ギミック操作・星の持ち運びを全て同じ操作に割り当ててしまっているので、移動中に星を落としては拾うというなんともアホな光景を何度も見ることになる。
これは画面上部にスワイプによるカメラ操作を、画面下部にタップによるオブジェクト操作を割り当てているがゆえに起こる現象なのだが、操作を上下に割り振ったセンスは理解に苦しむ。他プラットフォームでのマルチ展開を考えてのことならともかく、最初からスマートデバイス向け作品として作っていたのだからなおさらだ。
真面目にテストプレイをしたのかどうか甚だ疑問である。
ゲームとしての中身もなければシステムも中途半端なこの作品だが、ボリュームすら驚きの薄さで、なんと30分程度で終わってしまう。
これはマヌケが珍しく冴えていたからこうなったのではなく、そもそも制作者自ら1時間弱で終わる作品だと公言している。
ただただ来訪者に導かれるまま何を迷っているのかもわからないまま、いたずらに夢の世界を彷徨い歩いては中身のないパズルもどきを解き、悟りを得たのか得てないのかわからないようなふわっとした中身のないストーリーが展開されるこの作品は、残った印象の弱さゆえに本当にプレイしたのかどうかの実感すらもないという点ではなるほど確かに夢である。
ここまで短いと未完成品を無理やり出したのではないかと邪推してしまう。
1章ラストの虹の木に想いを馳せるApolloを見るに、当初の構想では少なくとも虹の色の数だけの章が存在したのではないだろうか?
とはいえ、中身のない作品が中身のないまま伸びたところで冗長になるだけでしかないし、今さら数章増えたところで厚みが増すとも思えないが。
終止符を打つためだけに中身のないまま引き延ばすよりは、未完の作品でも無理やり終止符を打つほうが潔いということなのだろうか。なんて皮肉な……。